1分怪談を1000話まで続けることになるとは、始めた日の私には、まだ見えていませんでした。
ChatGPTが登場したころ、私はAIがあれば何でもできるような気がしていました。
もちろん、今振り返れば、かなり大きな勘違いです。
ただ、その勘違いがあったからこそ、私は「自分にも何かできないか」と考え始めました。
文章だけでAIとやり取りをしていた時期です。
いろいろな構想を練っていく中で、私はホラーが好きだったことを思い出しました。
それなら、AIを使って、完全自立の怪談を作れないだろうか。
これが、1分怪談の出発点です。
「これなら100話も簡単そう」と思った日
1000話の怪談が始まる前日、試しにChatGPTへ、かなり雑な指示で10話の怪談を作らせてみました。
すると、思っていたよりも、それらしいものが出てきました。
当時の私は、それを見て驚きました。
「これなら、100物語ぐらい簡単に作れるのではないか」
今考えると、ここでも少し早合点をしています。
それでも、その翌日から、まずは最初の100話を目標に、1話目を作り始めました。
AIに作らせたはずが、ほとんど自分で作っていた
出てきた怪談を、最初は「それなりにできている」と思っていました。
ところが、落ち着いて読み込んでみると、私が思っている基準には、まだまだ届いていませんでした。
話の流れが急だったり、怖さの置き場所が弱かったり、最後の一文が説明になっていたりする。
文章として読めても、怪談として読んだときに残るものが足りない。
そこで、ChatGPTにはアイデアを出してもらい、私が考え、直し、削り、文章のリズムを整えるようになりました。
体感としては、9割以上、場面によっては99%近くを私自身が考えていたと思います。
AIを使ってはいる。
でも、当時作っていたものは、一般的な意味での「AIが作った怪談」とは、かなり違うものでした。
この経験は、今でも大きいです。
AIは、一度の指示で完成品を出してくれる魔法の箱ではありません。
少なくとも私の場合、最初に必要だったのは、AIを使いこなす技術よりも、「自分は何を怖いと思うのか」を言葉にする作業でした。
最初の動画は、文字が流れるだけだった
始めたころは、画像もありませんでした。
もちろん、生成動画もありません。
怪談の文章をスライドに載せて、Canvaで編集する。
文字が流れていくだけの、とてもシンプルな動画です。
ところが、作業は全然シンプルではありませんでした。
1本に1日8時間。
早く終わっても5時間。
文章を直し、スライドを作り、文字の表示時間を合わせ、音声を確認する。
たった1分の動画でも、当時の私には、それぐらいの時間が必要でした。

それでも、怪談そのものが好きでした。
作業は大変でしたが、少しずつ形になっていく時間も、嫌いではありませんでした。
だから、まず100話までは続けてみようと思えたのだと思います。
30話を過ぎたころ、アイデアが出なくなった
最初のうちは、思いついたことを形にしていけばよかった。
しかし、30話ぐらい作ったころから、さすがにアイデアが枯れてきました。
「次は何を書けばいいのか」と、手が止まることが増えました。
このころから、ChatGPTへの頼り方も少しずつ変わっていきました。
最初は、怪談をそのまま作らせようとしていた。
でも、完成品を出してもらうのではなく、場所、違和感、日常の崩れ方、最後に残したい感覚を分けて考えるために使う。
そうすると、アイデアを広げる相手として、かなり頼れるようになりました。
50話、70話と進むほど、苦戦は続きました。
ただ、私自身も少しずつ、怪談を作るコツをつかんでいきました。
怖い出来事を大きくするだけではなく、普通の場面に小さなズレを置く。
説明しすぎず、読んだ人の頭の中で続きを作ってもらう。
そういう感覚が、100話を作る過程で、少しずつ自分の中に残っていきました。
そして、なんとか100話までたどり着きました。
100話は、ゴールではなくサンプル集になった
100話を作り終えても、AIに一発で怪談を作らせることはできませんでした。
雑な指示だけで、私がそのまま採用できる文章が出てくるわけではない。
これは、最初のころに思い描いていた「完全自立」とは、かなり違う結果です。
ただ、100話分の怪談が手元に残りました。
そこで、ふと思ったのです。
私が作った100話をAIに読ませれば、私の基準に近い怪談を、もう少し出しやすくなるのではないか。
次の100話は、その考えから始まりました。
過去に作った怪談をサンプルとして使い、どうすれば私の作りたい方向に近づけられるのかを試す。
目的は、AIに全部任せることではありません。
私が毎回ゼロから悩む時間を、少しでも減らすことでした。
101話目で、1000話を考え始めた
101話目が始まった時点では、まだ「1000話まで続ける」と、はっきり決めていたわけではありません。
ただ、なんとなく、1000話という数字が頭に浮かびました。
100話を終えたなら、次は200話。
200話まで来たなら、もう少し先まで。
途中には、いろいろな寄り道がありました。
それでも、ずっと考えていたのは、AIに怪談を作らせることだけではありません。
AIを使いながら、私の作業をどこまで減らせるのか。
それでも、怪談の雰囲気や文章のリズムを、どこまで守れるのか。
この実験を続けているうちに、1000話という数字が、少しずつ現実味を持ってきました。
文章だけだった制作に、画像と動画が加わった
制作の形は、途中から大きく変わっていきました。
DALL-E 3がChatGPTで使えるようになったころ、怪談に画像を差し込むようになりました。
その後、Soraが登場し、生成動画を投稿する動画の中に入れるようになりました。
Runwayを使ったり、Veo 3.0を試したり。
その時々に使えるAI画像やAI動画を、少しずつ制作へ取り入れていきました。
最初から今の形があったわけではありません。
試して、崩れて、やり直して。
100話の後半ぐらいになって、ようやく、ほぼ全編に生成動画を載せる現在の1分怪談に近い形が見えてきました。
いま見返すと、技術の進歩に合わせて作品の見た目が変わったというより、私が「どこをAIに任せ、どこを自分で見るか」を覚えていった過程だったように思います。
短い動画の制作例として、以前作った動画も置いておきます。
1分怪談の動画は、YouTubeのチャンネルでも公開しています。短い時間で雰囲気を味わいたい方は、こちらからどうぞ。
1000話作っても、一発完成は2〜3本だった
1000話まで終わった今だから、正直に書きます。
AIが一発で出した怪談を、そのまま本文として100%採用できたものは、おそらく2本か3本です。
1000話も作れば、何でも自動でできるようになる。
そんな結果にはなりませんでした。
むしろ、1000話作っても、最後に文章を読むのは私です。
怖さの向きがずれていないか。
余計な説明が入っていないか。
最後の一文が、ちゃんと余韻になっているか。
そこを確認して、必要なら直します。
完全自立の怪談を作りたかった私が、1000話の終わりに見つけたのは、完全自動化ではなく、判断する場所を絞る方法でした。
それでも、制作工程は半自動化できた
一方で、できるようになったこともあります。
怪談の本文から各場面を展開し、場面ごとの画像を生成する。
その画像をもとに動画を作る。
最後に音声や文字、全体の長さを整えて、1分怪談というパッケージにまとめる。
この流れなら、本文だけを渡しても、各場面の絵をある程度用意できるようになりました。
もちろん、毎回完璧ではありません。
人物の見た目が変わったり、場面の意味を取り違えたりすることもあります。
それでも、以前のように、すべてを白紙から作る必要はなくなりました。

超高クオリティの作品を、短時間で作れるようになったわけではありません。
ただ、1000話を終えた現時点では、だいたい2時間あれば、本文を作り、各場面の画像を用意し、その画像から動画を作って、1分怪談としてまとめられるようになりました。
最初は5時間から8時間かかっていたものが、2時間前後になった。
この差は、かなり大きいです。
その過程で、できるだけお金をかけずに動画を作るための考え方も、身についたように思います。
高い動画生成に入る前に、低コストで千本ノックをする
今の生成動画は、より長く、よりリッチに作れるモデルが、次々に出てきています。
表現の幅が広がるのは、とても面白いことです。
一方で、できることが増えるほど、コストも増えやすい。
初めて動画生成に触れる人にとっては、そこが大きな壁になることがあります。
だからこそ、まずは無料、または超低コストで、短い動画を何本も作ってみる。
完璧ではないけれど、最後まで一本にまとめる。
その「千本ノック」のような練習が、今の環境では、案外大切なのではないかと思っています。
提供状況や料金は変わっていくので、使うサービスはその時点で確認が必要です。
それでも、無料から試せる環境や、低コストで短い動画を作る方法は、まだ一部に残っています。
低コストで練習しながら、同時に、どうすれば一発で理想に近い作品を出せるのかを学ぶ。
その人が増えれば、もっといろいろな作品が見られるようになる。
結果として、AI動画そのものの発展にもつながるのではないか。
私は、そんなふうに考えています。
動画とKindle、内容は同じで、楽しむペースが違う
1分怪談は、動画だけでなく、Kindleでも読める形にしています。
ここは誤解のないように書いておきたいのですが、動画の音声とKindleの本文は、一字一句違いません。
Kindle用に別の話へ書き直しているわけではありません。
違うのは、内容ではなく、理解するペースです。
動画なら、声の調子や沈黙、映像の切り替わりと一緒に、短い時間で怪談の空気を味わえます。
本なら、気になった一文へ戻れる。
少し休んでから、続きを読める。
自分のペースで、怪談の世界に入っていけます。
短い動画で雰囲気を感じたあと、文章としてゆっくり読みたい方は、Kindle版『百蝕怪談』もご覧ください。
動画と文章を行き来しながら楽しむ考え方については、動画とKindleをつなぐ制作の考え方にもまとめています。
1000話続けた理由は、AIに任せたかったからだけではない
最初の私は、AIがあれば、完全自立の怪談を作れると思っていました。
実際には、1000話作っても、一発でそのまま使える怪談は、ほんの数本でした。
それでも続けたのは、怪談が好きだったからです。
そして、AIを使うことで、自分の作り方そのものが見えてきたからです。
どこでアイデアが止まるのか。
どの文章を読むと、自分は違和感を覚えるのか。
どの工程なら、AIに任せても作品の芯が残るのか。
それを、1話ずつ、100話ずつ、確かめていきました。
1000話は、AIだけで作った記録ではありません。
AIに期待して、失敗して、直して、また試した記録です。
もしこれから動画生成を始めるなら、いきなり完璧な一本を目指さなくてもいいと思います。
短くていい。
荒くていい。
まずは一本を最後まで作ってみる。
その一本が、次の一本を作るためのサンプルになります。
私にとって、1000話はその繰り返しでした。
これからも、低コストで試せる制作方法や、うまくいかなかったことも含めて、少しずつ書いていきます。
AIで何かを作ってみたいけれど、最初の一歩が重い。
そんな方に、1000話続けた道のりが、少しでも参考になればうれしいです。
AIホラー動画の制作で実際にぶつかった問題については、きれいだけれど見づらいAIホラー動画を作ってしまった話も、よければ読んでみてください。
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